つくづく化学研磨という技術は理解されにくい技術なんだなぁと思います。
電解研磨やバレル研磨やバフ研磨は、その普及率から言っても皆さん良くご存知。
しかし「化学研磨は?」というと、名前も知られていないようなこともしばしばあります。
化学研磨はその名の通り「化学」で「研磨」する技術。
当社の化学研磨は金属が対象ですが、金属を化学薬品でエッチングして、金属表面を平坦化させ、光沢を出すと言うのがそもそもの基本です。
「化学薬品でエッチングする」というと、世間では「酸洗浄」とか「酸洗い」という技術が一般的で、これは溶接時の焼けやサビを落とすための酸処理(エッチング=削る)のことを言います。
これに対し化学研磨は同じエッチングでも、その削る量が極端に小さく、酸洗浄に比べると「金属表面を侵さない程度に"ゆっくり"、"ちょっとだけ"削る技術だと言えば理解しやすいでしょう。
おおむね酸洗浄の削り代(けずりしろ)が50~100µmなのに対し、化学研磨の削り代は5~20μmほどです。
化学研磨の受託加工をお受けするときに、「光沢だけ出して、またはバリだけ取って、寸法は変えないで欲しい」という方が時々いますが、これは絶対に無理な話。
何度も言うようですが、化学研磨の原理はウェットエッチングですから、絶対にワークは痩せてしまいます。
ただし、平たいワークの面に対し突起したバリの方が先に溶けやすいので、おおむねワークを10μm程度痩せさせてあげれば、立ち上がった糸バリであれば、ほぼ完全に溶け落ちます。
一方の電解研磨も原理は化学研磨と似ています。
溶かすときに化学の力だけで溶かす化学研磨に対し、電解研磨は化学薬品で削るところまでは同様で、電解液という名の酸性液体中で電極に電圧をかけて電流を流し、その電流が流れやすいワークの突起部分が選択的に酸にエッチングされます。
ですから「化学的に削る」という意味では電解研磨と化学研磨は似たもの同士です。
また余談ですが、バレル研磨はワークと研磨剤を一緒にバケツ(バレル)に入れ、それをゴロゴロ回してあげるとワークが徐々に削れていくという技術で、一方のバフ研磨は回転した細かいヤスリにワークを押し当てて(またはバフの方を押し当てて)削っていくという技術です。
「物理的に削る・機械的に削る」という意味では、バフとバレルは似たもの同士と言えます。
ここでまとめ。
『研磨には、化学的な研磨と、物理的な研磨がある』
『研磨をすれば、必ず痩せる』
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